Ricoriss リコリス

女性の「生きる」を創造する

「振り回される自分に疲れた」人からの振り回しをリセットするために

押しの強い相手や

 
そうでなくても気づくと他者から
「振り回されてる」と
感じることはありませんか?
 
 
今回は自分の意思がうやむやなままで
相手のペースに巻き込まれやすい方のお話です。
 
 

「これを覚えて何になるの?」

 
それは学生時代の、期末テスト中のことです。
出題された「源氏物語の問い」を眺めながら
 
 
「テストが終われば
源氏も何も、忘れていくだろうに
これを覚えて何になるのだろう」

 
冷めた気持ちで、回答を書く自分がいました。
 

 
源氏物語が生み出されたのは、平安時代。
時の権力者、藤原道長という大パトロンの元
紫式部が執筆しました。
 
 
平安時代は、様々な文化が花開いた時期で
 
かな文字や文房具、十二単じゅうにひとえ
そして元々はメモ代わりだったおうぎ
 
この時代に発展し、源氏物語でも雅な貴族の
装飾品として、使われるようになります。
 
 

源氏物語って「扇」のようだ


 
源氏物語には、華やかな貴族の女性たちと
光源氏という、1人の男性を中心とした
恋愛模様が描き出されます。
 
 
光源氏が、扇の中心かなめなら
 
彼を取り巻く女性たちは
要から放射線状に広がる、扇面せんめん
 
扇の紙面に描かれる絵柄でしょう。
 

 
女性の中には
「光源氏の扇の一部」としての自分を
受け入れる者もあれば
 
扇の一部からすり抜けたい者、
恨む者と様々です。
 
 
宮中の閉ざされた世界で女性たちは
光源氏という権力者の扇の内側で
ヒラヒラ舞い流され続けます。
 
 

かくいう紫式部も「扇の一部」だった

 
紫式部は、権力者・藤原道長から才を認められ
道長の娘の教育係として
宮廷入りを果たします。
 

 
名声、キャリア、権力者からのバックアップ。
 
完全な権力寄りのポジションを生きた
紫式部ですが、実は宮仕えなど望んでおらず
 
彼女が源氏物語で描いたのも
権力の栄華ではありません。
 
 
その筆致はどちらかというと
「扇の一部」として、権力者から好き放題
振り回され、舞い散らされたような
 
無念や激情に、向かっていたと思います。
 
 

道長
この世界は世のもの〜
全部思い通りになる〜
満月みたいに完璧〜

 
とは、紫式部のパトロンであり
最高権威者、藤原道長の有名な和歌です。
 
 

もやし
道長言い過ぎ
ねぎ
噛みつきな

 
 
そんな権威者の慢心を、特等席で見ていたであろう
紫式部は作中、光源氏にも
 

光源氏
自分何しても許されるし〜

 
と語らせたのは、宮中の権威者への風刺を
確かに込めたかったからかもしれません。
 
 
 
ですが月も太陽に、すっぽり隠されるように
満月だった藤原も、やがては衰退に向かい
 
扇コレクションを謳歌していたような
光源氏にも、陰りが見えてきます。
 
 

浮かぶだけの舟

 
源氏物語、物語の後半は
「扇の一部」として生きてきた女性たちの
光源氏への拒絶が、描かれ始めます。
 
 
最終章では、光源氏亡き後の世界が描かれ
最後に登場するのは浮舟うきふねという女性です。
 

 
浮舟もまた「扇の一部」の人でした。
 
 
彼女は権力を持つ
2人の男性から求愛されるものの
どちらの男性に傾けばいいのか、わかりません。
 
 
男性たちはどちらも、人生を導いてくれる
素晴らしい船頭に見えるし
 
2人の間で揺れ動く自分を
浮舟は申し訳なく思います。
 
 
強引な方の男性に、惹かれていた浮舟でしたが
彼女は男性からの扇の風に
振り回される状況に酔っていただけで
 
2人の男性のことも、自分のことも
真に見えていた訳ではありませんでした。
 
 
「なぜ2人もの船頭を
舟に招いてしまったのだろう」

 
 
やがて舟は方向性を失い、旋回しはじめ
疲れ果てた浮舟は、浮くことをやめ「沈む」
 
入水し、消えてしまおうと決意します。
 
 

水中に消えた舟

 
宇治川に身を投げてしまった浮舟。
 
ですが意識を失い、木の下に倒れていたところ
偶然通りかかった、僧に助けられます。
 

 
浮舟は僧たちと生活を始め、徐々に
入水によって、失っていた記憶──
 
 
自分の舟を、他者に手渡すようにして浮いていた
自分自身を思い出します。
 
 
浮舟が最後に選んだのは、出家でした。
 
 
彼女に求愛していた、男性のうち強引な方は
すでに他の女性に惹かれはじめていましたが
 
もう1人の男性は、浮舟を忘れられません。
 
 
彼は「浮舟は生きている」という風の噂を頼りに
使者に手紙を持たせ、浮舟の元へと向かわせます。
 
ですが浮舟が
手紙に応じることはありませんでした。
 

 
 

「源氏物語の、最終章の名を答えなさい」

 
期末テストで出題されたその問いに
学生だった自分は
 
 
夢浮橋ゆめのうきはし
 
と、無機質にペンを走らせます。
 

 
源氏物語では
満足に女性と時を過ごせない光源氏が
 
「夢のわたりの浮橋か」
夢で渡る橋のように、儚く不安定だ──
 
と、なげき詠うくだりがあります。
 
 
けれど源氏物語の最終章
夢浮橋ゆめのうきはし」で描かれたのは、儚さではありません。
 
 
作家の瀬戸内寂聴さんが
「紫式部は出家したのではないか?」
 
紫式部自体が、浮舟と同じ道を
生きたのではないかと語ったそうです。
 
「源氏物語と日本人 紫マンダラ」河合隼雄
 
 
そうだったのかもしれないし
またはそう生きたくても、できなかったからこそ
 
浮舟という女性に
「夢のごとく見える橋でも渡れ」
思いを託したのかもしれません。
 

 
1000年前の京の都
紫式部から放たれた扇の風は
 
期末テストを終えた
学生たちの笑い声を通りぬけ
戦地に広がる、麦畑をも揺らします。
 
 
他者から巻き起こされる風に振り回され
沈んでいった浮舟。
 
けれど彼女は橋を渡るために
水中から再び、浮かび上がってきます。
 
 
源氏物語の最後、浮舟はいまだ自分に
思いを寄せてくる、男性からのふみに背をむけ
床に突っ伏し、むせび泣きます。
 
 
船頭ならもういらない
 
とまらない涙
 
 
けれど彼女の胸にあったのは虚無ではなく
人生を生きるための、自らの権威かなめでした。
 
 
 

最後に、オンライン・カウンセリング


 
私たちには、得体のしれない強風にあおられ
立っているのが、やっとの時もあります。
 
 
オンライン・カウンセリングコースでは
今の自分のこころの状態を、時間をかけて
カウンセラーと見つめ直し
 
 
自分にとって、何が足枷になっていたのか。
 
抱えている困難に対し、自分なりの理解を
得ながら、これからを歩むための
こころの基盤を育てていきます。
 
 
難しい状況に振り回され続けるのではなく
自分の要に、立ち戻る必要がある方は
オンライン・カウンセリングをどうぞ

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