みなさんは、信頼できる人はいますか?
歳を重ねるにつれ、トラブルを避け
安全を求める気持ちが強くなる程に
人を純粋に信頼する力も、心の扉を開く力も
徐々に弱まっていくのかもしれません。
今回は私たちの繊細な力
「人を信頼すること」についてのお話です。
人間は計りしれない
昔、メキシコで道に迷っていた時
現地のおじさんが、見慣れない日本人を
気にかけてくれ、目的地までの行き方を
教えてくれたことがありました。
けれどもおじさんの親切心に背を押され
辿りついたのは全く別の場所で
道ゆく他のメキシコ人に尋ねたところ
「教えられた道は間違ってる」と指摘されます。
「さっきのおじさんは何故
こんな道を教えてきたんだろう…」
たどり着いた見当違いな場所に、笑えばいいのか
怒ればいいのか、わからなくなりました。
後日知ったのは、海外では
たとえ正しい道のりを知らなくても
「相手の力になりたい純粋な善意」から
間違った道でも、教えてあげようとする人々が
一定数いる話でした。
外国で人を信頼するには、リスクが伴います。
だから海外旅行ではツアーしか参加せず
「ツアー日以外は、現地ホテルの部屋に閉じこもり
一歩も外に出ない」と話していた方もいました。
不信感は積み重なる
ある時訪れたバリでも
怪しい話を持ちかけてきた現地人の男性を
友人と2人、撒いたことがあります。
現地の男性は、最初は感じがよかったのに
彼の持ちかけ話に、一切応じない私たちに対し
と不気味な笑顔で迫ってきます。
幸せな時も邪な時も
笑顔を浮かべられる人間の器用さに
心を開き、人を信頼するなど
相当難易度が高いと、感じざるをえません。
「きっとあの男性は、マジックマッシュルームでも
売りつけたかったのだろう」
当時噂で聞いた、幻覚作用をおこす違法キノコを
友人と思い浮かべていました。
もう十分
マジックマッシュルームにも
外国人として、鴨扱いされる状況にも
少し疲れていた自分たちは
翌日、バリの小さな離れ島に向かい
現地の人が群がってこない
静かな海辺でくつろいでいました。
けれども東南アジアの強い日差しを
なめていた肌は、あっという間に赤く腫れあがり
Tシャツも着れないほど
日焼けの痛みに苦しんでいると
現地のおじさんが通りかかり、尋ねてきます。
片言の英語で、赤くなった肩を指さし
Sunburn Pain、と説明すると
おじさんは同情的に笑いながら
その場を去っていきました。
その小さな島に住む人々は
全体的に外国人に興味がなさそうでしたが
しばらくすると、先程のおじさんが戻ってきて
手には、アロエが握られていました。
おじさんはアロエの葉の内側にある
ゼリー状の実を出し、日焼けした肩にのせてくれ
アロエの優しい冷たさが
肩にもこころにも染み入ります。
現地の方の純粋な善意──
前日のマジックマッシュルームの君に
見せてやりたい親切心でした。
日焼けの熱をとろうと
しばらくアロエの実を変え替え
おじさんと談笑していると
彼はこの島育ちで、時折観光客向けの
ツアーガイドをしていることがわかります。
そうしておじさんは、笑いながら言いました。
…はじめから、勧誘目的だったのか?
もしかして最初から、ツアーの勧誘狙いで
話しかけてきたのだろうか。
アロエも、気さくな会話も全部
ツアーに誘うための布石だったのか??
アロエのおかげで、日焼けは大分回復し
おじさんには感謝しかないものの
純粋な善意を勝手に期待していた分
微妙なガッカリ感が拭いきれません。
おじさんにも生活があり、チャンスがあれば
稼ぎたいと思うのは当然でしょう。
人の親切心にも、裏面はあります。
心を開き、人を信じるからこそ
救われる思いもする反面
メキシコで訳のわからない場所に案内され
マジックマッシュルームの君の
貼りつけられた笑顔にゾッとし
親切心からふいに出てきた
おじさんの、たくましい勧誘魂を前にすると
信頼というのは
いつ崩れてもおかしくない脆い崖の先端に
置かれているものだと思います。
あなたも私も同じ、善と悪を備えた存在──
だからその矛盾を受け入れながらも
人に心を開きなさいと諭されても
もはや幻覚キノコ風の、狂言にしか聞こえません。
それならホテルの部屋に閉じこもり
あらゆる危険の芽を
完全に潰すに限るのでしょう。
旅先でも日常でも
いつか信頼できる誰かに出会えれば、と願いつつ
私たちは無念のうちに
心の扉を閉めざるを得ないのかもしれません。
人を信じるのはギャンブル
島を巡るツアーに行かないか──?
選択を迫られた私たちは次の瞬間
アロエおじさんのバイクで
島をかけぬけていました。
アロエしか見ていなかった景色は一転し
おじさんの友人も加わり
2台のバイクで、村の集落を進みます。
その頃には
アロエおじさんへの、微妙なモヤモヤは吹き飛び
自分たちだけでは、辿りつけなかった景色──
午後の眠たそうな島で生活する、人々や犬たちが
バイクの疾走感と共に、視界を流れていきます。
自分の限界を定め、ホテルの部屋にこもることが
間違っているとは思いません。
自分にとって正しい行動は、時によって違います。
アロエおじさんが島巡りの最後に
連れて行ってくれたのは、当時観光客に
知られていなかった、シークレットビーチで
優しいマリンブルーの海の美しさに
友人と2人、浜辺に立ち尽くします。
友人は思わず両手を合わせ
この景色を見せてくれたバリの神様に
感謝していました。
いかついトゲトゲの葉の奥に、柔らかく
繊細な実が隠れているアロエのように
私たちの中にも、何が入っているのかはわからず
人にこころを開くか、控えるべきかも
いつまで経っても、わからないのでしょう。
おじさんはとても親切で、野心もあった。
ドリームビーチと呼ばれていたその海は
信頼と不信の間で見つけたからこそ美しく
見飽きることはありませんでした。
最後に
小林製薬さんには、アロエ研究所があり
バリでの日焼けが早く回復したのも、アロエには
肌の傷を修復する作用があるからだそうです。
昔の人がアロエの葉の内側に
何があるのかに迫っていったように
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私たちの「こころの内側にあるもの」に迫り
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内面から修復させていくコースです。
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